【プロローグ】 回想

 

BGM

04 Without.wma

=[無]=================================
あの日、律子は泣いていた。
それでも、俺の声は確かに届いていた。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
……そう、信じていた。

BG

b2d_nightview.png

=[無]=================================
歯車が噛み合わないまま、
ラストコンサートは失敗に終わった。

 

 

 

=[P]=================================
「これからも、アイドル続けろよ!
 本心じゃ、
 律子だってそうしたいんだろう?」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「ファンだってそれを望んでる!
 それに――」

 

 

=[無]=================================
ただ、必死だった。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
そして、律子の返事は、
今でも耳に残っている。
涙と一緒にこぼれた言葉――。

STAND

ritsuko_d_01.png

=[律]=================================
「やっぱり私……
 もうしばらく、悪あがきしてみる」 

 

 

=[無]=================================

それが、律子の最後の笑顔だった。

 

=[波]=================================
そして、アイドル“秋月律子” は、
765プロから――、
芸能界から、姿を消した。

 

=[塗]=================================
獲得ファン数、104万人。
最終アイドルランク、【B】――。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
“秋月律子” を
この世から消したのは、俺だ。 

 

【第一幕】 それぞれの1年

BGM

Appassionati.wma

 

BG

b2d_765pro_floor_lv2_daytime.png

 

STAND

haruka_h.png

=[無]=================================
明日はオフにする、と伝えた時、
春香ちゃんは一瞬だけ、
考える素振りをして見せた。

STAND

haruka_c.png

=[春]=================================
「あ、ちょうど1年ですもんね」


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「何かイベントは起きそうですか?」

 

 

=[無]=================================
春香ちゃんは意外に勘が鋭く、
             無邪気で、
             残酷だ。

STAND

haruka_k.png

=[P]=================================
「何も」

 


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「一日中、
 自分の無力と無能を思い出すだけだよ」

 

 

=[無]=================================
自嘲ではないし、後悔とも違う。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
心臓の中に
溶けない氷を放り込まれたような、
小さな、冷たい痛み――

STAND

haruka_h.png

=[春]=================================
「プロデューサーがそんな顔だと、
 担当されるアイドルはツライなー」



STAND

haruka_j.png

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「そーだ。まだ探せば、
 桜が咲いてる所があるかもしれない」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「いっそ気晴らしに、
 デートにでも誘っちゃおうかなー」

STAND

haruka_d.png

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

「どうします? プロデューサー」
 

=[波]=================================
俺達は知っている。

 

春香ちゃんに必要な
“プロデューサーさん” は、俺じゃない。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
俺が求める “アイドル” は、
春香ちゃんじゃない。
  =[黒]=================================

 だから俺達は、上手く行っている。

BG

b2d_lastconcert1_b2.png

=[無]=================================
律子を失って抜け殻になった俺に、
プロデューサーさんを失った春香ちゃんが
手を差し伸べたあの日から、
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
俺達の1年が始まった。

CUT IN

i_want.psd

-[カットイン] - - - - - - - - - - - -
デビュー曲は、『I want』。
それは、たった一度だけの叫び。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
デビューから8ヶ月が経過した、
Bランクアイドル “ハルカ” の、
たった1曲だけの、ヒット曲――
  =[塗]=================================

俺達は知っている。

   

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
春香ちゃんに必要な
“プロデューサーさん” は、俺じゃない。


俺が求める “アイドル” は、
春香ちゃんじゃない。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 だから俺達は、上手く行っている。

 

【第二幕】 メール

 

BG

bg/b2d_nightview2.png

※チラつくノイズ的な記憶。

=[無]=================================
その夜、一通のメールを受け取った。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
差出人毎にフォルダ分けされる社用携帯。
その『差出人』からのメールは、
ちょうど1年前――、
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「ありがとう」
という件名のメールが届いて以来だった。

BGM

06 i just don't know what to do with myself.wma

=[件名:Blue]=========================
明日は久しぶりのオフとなりました。
よりによって、ですよね。
つい、色々と考えてしまって……
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
いっそ、昔を懐かしんで、
ブルースでも聴きに行こうかと思います。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
明日は起こしてくれる人が隣にいないから、
気を付けないといけませんね。
  =[件名: RE:Blue]====================
どう触れていいのか、分からなかった。
今も、まだ。
  =[塗]=================================
でも。

それでも。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

俺は、「律子の声」が聞きたい。

 

【第三幕】 再会

 

BGM

08 Synchronicity.wma

 

BG

b2d_jazzhouse.png

=[無]=================================
あの日と同じ店で、
    同じ歌を聞きながら、
    同じ照明の下を歩く。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
あの日と同じボックス席を目指して歩く。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
そして、あの日と同じ “秋月律子” の
面影を探していた自分に気付き、
また、胸の奥が冷えた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
“秋月律子” は、
   もういないのに……
    =[P]=================================
「隣、いいかな?」

STAND

ritsuko_b_01.png

=[律]=================================
「来てくれたんですね」

    =[P]=================================
「メール、返しただろ?」

=[律]=================================
「なんか、恥ずかしい文面でしたよ」

 

 

 

 

=[無]=================================
不自然なくらい、自然な会話。
緊張も、わだかまりもなく、
向かいの席に座る。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
それは間違いなく、
“秋月律子” の声だった。

 

STAND

ritsuko_a_02.png

=[律]=================================
「1年、ですね…」


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「私がソロで、ファン100万人なんて、
 出来過ぎでした」

 

    =[P]=================================
「俺がランクBで終わらせちまったんだ」


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「ランクAに上がって当然の、
 人気も、実力もあったのに……」

STAND

ritsuko_b_01.png

=[律]=================================
「あー、ダメなパターンですよ。
 この流れは」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「『私の力不足』と
 『俺のプロデュースのミス』、
 で散々言い合ったじゃないですか」

BGM

無し(消し)

  =[P]=================================
「……分かってる。
 それでも、
 『もしも』を考えてしまうんだ」
  =[波]=================================
「あのタイミングで――」

  =[塗]=================================
「“如月千早”が
 『Vocal Master』に出る可能性に
 気付いていたら、って……」

 

【第四幕】 “ハルカ” と “Mirage”

 

BGM02 

Beyond the Mirage.wma

 

STAND

haruka_a.png

 

BG

bg/b2d_room_haruka.png

=[無]=================================
『ゴメン』というタイトルのメールには、
今日のデートは中止、と書いてあった。
プロデューサーも、知ってるくせに。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
本気で誘う訳が無いのに。
本気で応える気も、無いくせに。

 

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
携帯を置き、ノートPCを開く。
千早ちゃんからもらったPVを見る。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
如月千早ソロユニット、
 “Mirage(ミラージュ)”の新曲だ。

STAND

haruka_k.png

=[春]=================================
「千早ちゃんのPVは、
 いつもカッコいいなぁ……」

BGM

03 Preludio.wma

 

STAND

chihaya_m_01.png

ritsuko_m_07.png

 

BG

bg/pv_atrium.png

          

=[無]=================================
画面の中で、“Mirage”が歌ってる。
極端に無表情の千早ちゃんと、
仮面みたいな笑顔の人。

STAND

ritsuko_m_07.png を、

ritsuko_m_05.png に差し替え。

 

ゆっくりと、

立ち絵をグレーにしつつ、

背景を黒に。

               

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
前の1年からブランク無しで再始動した、
千早ちゃんの“Mirage”は、
活動10ヶ月目の今月、ランクAに昇った。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ファン数は140万人に届く勢いらしい。

 

 

BGM

03 Moment to Moment.wma

 

STAND

haruka_g.png

 

BG

bg/b2d_room_haruka.png

=[春]=================================
「次は『SUPER IDOL』に挑戦かも、って」


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「プロデューサーさん、
 私達も次こそ、
 『SUPER IDOL』に出ましょうね」

    =[無]=================================
世間は“Mirage”に注目している。
それでいい。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
765プロを離れてしまったけれど、
プロデューサーさんは、
それでも、私を見てくれているはずだ。

STAND

haruka_k.png

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
Aランクで活動を終了した私が、
今、Bランクで低迷している姿を、
見ているはずだ。

 

 

=[波]=================================

  それでいい。

 

=[塗]=================================


“天海春香”の魅力を
  引き出せるのは自分しかいないって、
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 きっと、そう思ってくれるはずだから。

 

【第五幕】 間違い

 

BGM

10 The Fox.wma

 

STAND

ritsuko_a_02.png

 

BG

b2d_jazzhouse.png

=[律]=================================
「プロデューサーは、
 どうして今日、来てくれたんですか?」

STAND

ritsuko_b_04.png

=[P]=================================
「――謝りたかった」

 

「律子は、“秋月律子”として
 スポットライトを浴びるべきなんだ」

=[波]=================================
「俺は、律子を守れなかった」

BGM

08 When I Think of You.wma

 

BG

cutin04a.png

その月の『Vocal Master』は、
“秋月律子”の圧勝と、
誰もが予想していた。

BG

cutin04b.png

 

or

 

cutin04a.png + レイヤー

-[カットイン] - - - - - - - - - - - -
   

取材陣の注目度も高く、
受け答えをする律子も、ノッていた。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
デビューから11ヶ月が、経過していた。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
既に『DanceMaster』と『Visual Master』
を制し、ファン100万人を獲得していた

“秋月律子”は――、
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
『Vocal Master』制覇で、
アイドルランク【A】に昇るはずだった。

    しかし、
その前に立ちはだかったのは、
同じ765プロ所属のアイドル――。

BG

cutin04c.png

 

or

 

cutin04a.png + レイヤー2枚

-[カットイン] - - - - - - - - - - - -
デビューから9ヶ月の“如月千早”だった。

 

 

『Vocal Master』は事実上、
2人の一騎打ちとなった。

BGM

05 Los Angeles, No. 2.wma

 

STAND

ritsuko_a_03.png

 

BG

b2d_jazzhouse.png

=[波]=================================
=[律]=================================
「プロデューサー。
 私が今日、プロデューサーを
 呼んだ理由、教えましょうか?」

 

  =[P]=================================
「あ、あぁ。聞かせてくれ」

STAND

ritsuko_a_01.png

=[律]=================================
「過去を引きずってセンチメンタルに
 なってる大バカ プロデューサーの、
 横っ面をひっぱたく為ですよ」
    =[P]=================================
「ちょっと待て。なんでそんな――」

STAND

ritsuko_a_05.png

=[律]=================================
「待ちません。
 そもそも、
 『守れなかった』って、何ですか?」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「一体、どうやったら、
 『守れた』っていうんですか?」
  =[無]=================================
――1年間。
いつもあの頃の事を考えていた。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ああしたら、どうなっていただろう。
こうしたら、何が変わっていただろう、と。

BG

cutin04a.png (一瞬だけぼやっと) 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
俺達には、時間が無かった。
あの週の『Vocal Master』攻略は、
絶対に外せなかった。

STAND

ritsuko_a_03.png

 

BG

b2d_jazzhouse.png

=[律]=================================
「“如月千早”に出られたら勝てないから、
 今回は譲ってくれ」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「そう言ってあのプロデューサーに、
 頭でも下げるんですか?」

 

  =[P]=================================
「いや、そうじゃ――」


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
そうじゃないと、言い切れるか?
戦場は『Vocal Master』、
敵は“如月千早”だ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
戦略で、
真っ向勝負で、
勝つ見込みは…、あっただろうか。

BGM

02 Time to Remember.wma

 

STAND

ritsuko_a_04.png

=[律]=================================
「今の私を、
 『かわいそう』って、思ってますか?」

 

 

=[P]=================================
「…………」


=[無]=================================
沈黙。
そんな俺の顔を見て、
律子が、小さく笑った

STAND

ritsuko_a_02.png

=[律]=================================
「“Mirage”がデビューして、
 10ヶ月が経ちました――」
 

=[波]=================================

“如月千早”は1年間の活動を終えると、
ソロユニット“Mirage”として、
鮮烈な再デビューを果たした。

BG

b2d_lastconcert1_b1.png

 

STAND

cutin05.psd

-[カットイン] - - - - - - - - - - - -
ボーカルは元Aランクアイドル“如月千早”。
だが、ステージの上で、PVの中で、
常にもう1人が付き従う幻のデュオ――。

STAND

cutin05.psd

-[カットイン] - - - - - - - - - - - -
マスコミは、もう1人の千早の正体を
探ろうと必死になっている。

STAND

cutin05.psd



- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ファンサイトでも、様々な憶測や、

無責任な推理が飛び交っている。

BG

b2d_jazzhouse.png

 

STAND

ritsuko_b_02.png

=[波]=================================
=[律]=================================
「『Vocal Master』で千早に負けてから、
マスコミにも色々書かれましたよね」

 

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「765プロの内紛とか、
 プロデューサー間の確執とか」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「私に様々な妨害をされてた千早が、
 ついに反撃に出た――とか」

STAND

ritsuko_a_02.png

=[無]=================================
ひどい有様だった。


 

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
もう、活動停止が目の前に迫っていた。
ラストコンサートのチケットは
既に全席売り切れていたが、
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
『Vocal Master』での敗北と
週刊誌の捏造スキャンダルのせいで
ファンの心は冷め、
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
“秋月律子”のラストコンサートは、
成功とは程遠い幕切れとなった。

STAND

ritsuko_b_02.png

=[律]=================================
「おかげで、
 私の事なんてもう、誰も憶えてません」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「ましてや、
 その千早の影としてユニットを組んでる、
 なんて、誰も想像しないでしょうね」

STAND

ritsuko_b_04.png

=[P]=================================
「俺は、今でも憶えてる」


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「律子は、最高のアイドルだ。
 誰かの影なんて、そんなの――」

STAND

ritsuko_a_05.png

=[律]=================================
「事実を認めて。
 あんな活動の終わり方をした私を、
 あの直後で、誰が再起させられるの?」

BGM

04 Priestesses of the Mist.wma

STAND

ritsuko_b_01.png

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「1年。
 これはあの女性(ひと)との契約よ」

 

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「私は一切表に出ない。
 名前も、顔も。
 765プロからは一時的に除籍、引退」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「レッスンに関しては、
 千早と同等か、
 それ以上の時間を費やす事」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「トークもドラマも無い。営業すら無い。
 あるのはレッスンとステージと、
 PVの収録だけ――」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「そんな10ヶ月を過ごしてきたのよ。
 私自身の、次の、1年のために」

 

  =[無]=================================
律子の声。
怒りと、苛立ちと、
小さな、小さな涙。

STAND

ritsuko_a_02.png

=[律]=================================
「私はダンスでも、歌でも、

 トップを目指すわよ。

 考え方によっては、最高の環境だもの」

 

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「あと必要なのは、
 本当に優秀なプロデューサーだけ」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「あなたが、
 あの女性(ひと)のプロデュース手法を
 気に入らないのは良く分かってる」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「でも“Mirage”が、140万人の
 ファンを獲得しているのは事実よ」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「プロデューサー。
 “ハルカ”はどうなの?」

BGM、消える。

 

立ち絵溶ける。消える。

背景、暗くなる。

=[P]=================================
「それは……」

 

  =[無]=================================
“ハルカ”は、成功を望んでいない。
最初のプロデューサーと残した結果を
超える事を、望んでいない。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

   だから、俺を選んだんだ。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
一度だけ、
なぜ、俺に声を掛けたのか、と聞いた。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
答はたった1つだった。

STAND

haruka_please.png

=[春]=================================
「あなたは、
 『一緒にトップアイドルを目指そう』
 なんて、絶対に言いそうにないから」

BG

b2d_jazzhouse.png

 

・急に引き戻されるように背景復活。

・BGMもうっすら復活。一瞬だけ。

04 Without.wma

=[無]=================================
「申し訳ございません。
 ラストオーダーのお時間ですが」

BG

ゆっくり黒に。

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
タキシード姿の男性が、そう告げた。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
あぁ、と慌ててメニューを開こうとする
俺の手を遮ると、律子はその男性に、
もう出ます、と小さく会釈を返した。
このあたりは、

全画面黒背景に白テキストで。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「どうしても今夜、あの場所で、
 もう少しだけ話がしたいです」
――と、律子が言った。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「すぐに後を追うから。先に行って、
 待っていて下さい」
そう、律子が言った。 

 

【終幕】 ラストオーダー

 

BGM

06 i just don't know what to do with myself.wma(小さめ)

 

BG

b2d_seaside_park.png

=[無]=================================
徒歩で10分ほどの移動の間、
律子との会話を思い返していた。

背景、ほぼ真っ黒。

 

テキストは文字送り無しで、

パッと出る。にじんで消える。

パッと出る。にじんで消える、と。

フラッシュバック的に。

 

背景、暗いままこっそり橋に変化。

(b2d_nightview.png)

  - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
『私が今日、プロデューサーを呼んだ理由、
 教えましょうか?』

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
『過去を引きずってセンチメンタルに
 なってる大バカ プロデューサーの、
 横っ面をひっぱたく為ですよ』
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
『あと必要なのは、
 本当に優秀なプロデューサーだけ』

BG

b2d_nightview.png

(律子の立ち絵直前まで、暗め)

=[P]=================================
「でも、まだ、
 チャンスがある、って事だよな」
   

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
今は4月の終わり。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
“Mirage”の活動終了まで、あと2ヶ月。
“ハルカ” の活動終了まで、

あと、4ヶ月――。

   

=[律]=================================
「お待たせしました。

 プロデューサー殿」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
背後から聞こえる律子の声。
懐かしい声。

BG

b2d_nightview.png

(この辺で通常の明るさに)

=[無]=================================

 振り返れば、そこに、懐かしい面影。

BGM

03 Moment to Moment.wma

STAND

ritsuko_c_01.png(左寄り)

=[P]=================================
「律子……」

STAND

ritsuko_c_03.png(中央)

=[律]=================================
「俺は今でも憶えてる、って言ってくれたのが、
 嬉しかったので」
    =[無]=================================
律子は腕を組み、
一度、眼鏡に手を添えた。

STAND

ritsuko_c_02.png

=[律]=================================
「私はまた、プロデューサーと、
 トップアイドルを目指したいです」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「だから、本気で目指してください。
 春香と、トップアイドルを」
    =[P]=================================
「春香と、か?」

STAND

ritsuko_c_03.png

=[律]=================================
「ええ。あと4ヶ月も腐ってたら、
 リハビリが大変ですよ!」
    =[P]=================================
「腐るって、失礼だな」

STAND

ritsuko_c_04.png

=[律]=================================
「何言ってるんですか。
 どう見たって手抜きもいい所ですよ!」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「イメージ戦略も、リリース時期も、
 わざとずらしてるみたいに外して……」
    =[P]=================================
「いや、それには色々と理由や事情が――」

    =[律]=================================
「関係ありません!
 その理由や事情を何とかするのが
 プロデューサーの仕事でしょ!?」

STAND

ritsuko_c_06.png

=[律]=================================
「私は、
 やっぱりあなたに、
 プロデュースして欲しいから……」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「だからあなたにも、
 『最高のプロデューサー』を
 目指して欲しい」
    =[P]=================================
「ああ。分かった。最善を、尽くすよ」

STAND

ritsuko_c_05.png

=[律]=================================
「春香と一緒に、
 “Mirage” を、超えてください」

- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「そして私が“Mirage” も、
 “ハルカ” も超えられるよう、
 しっかりプロデュースしてください」

STAND

ritsuko_c_07.png

=[白]=================================
「これが、名も無きアイドルからの、
『最後のお願い(ラストオーダー)』です」

 

【エピローグ】 そして、長い夜が明ける

 

BGM

10 Shinjuku Twilight.wma

BG

b2d_765pro_entrance_lv2_daytime.png

翌日、
俺は765プロのオフィスの前で、
一度大きく深呼吸をした。
   

春香ちゃんに伝えなきゃいけない。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

俺が、
 「絶対に言いそうにない」
        と言われた言葉を。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 あと4ヶ月――。
 まずは、ミーティングから始めよう。

 

白の塗り。

その後、全画面、黒文字で。

=[白塗]=============================

君のプロデューサーさんを
振り向かせる方法は、
いくらでもあるはずだから。

 

 

 

 

 

END

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