第一話 『霧の中、夢の中』


 11月21日、土曜日。
 打ち合わせ予定時刻の17時を過ぎても、プロデューサーはまだ来ない。何やってるんだろう、あの人は……。
 最近ではいい加減な所も減ってきて、少しは目標にしてもいいかな、とも思っていたのに。

 壁の時計は17時20分。
 あぁ、もう。やっぱり経費でノートPCを申請しよう。そうすれば会議室でも事務仕事ができるし、スタジオやロケでも持ち歩ける。
 セキュリティ上の問題はいくつかあるけれど、それ以上に業務効率は上がるはずだ。こうやって、待たされている間だって――
「悪い、律子! 少し遅れた」
 両手いっぱいに荷物を持って駆け込んできたプロデューサーの顔は汗まみれで、ぜぇぜぇと肩を上下させる姿を見せ付けられては、あまりきつく叱るのも悪い気がする。
「とりあえず、遅れた理由はキッチリうかがいますから、そのつもりで」
 少しぬるくなってしまったコーヒーを差し出すと、サンキュと言って一息で飲み干してしまう。
 おお、またコーヒーの淹れ方が上手くなったな! と笑うプロデューサーに対して、今日は豆の買い置きが切れていたからインスタントだ、と告げるべきかどうか一瞬悩む。
 まったく、違いの判らないプロデューサー殿だこと。

「クラブナイト、ですか?」
 それは初めて聞くイベント名だった。私に、出演依頼が来ているらしい。
「具体的に、どんなイベントなんですか?」
「それは、まだ秘密だ」
 プロデューサーは腕を組み、いかにも訳知り顔でニヤリと笑う。
「えっと……、イベントのターゲットは? 他の出演者は? トークメイン? 歌メイン?」
「全部秘密だ。ああ、いや、歌メイン、って所は間違いないけど、あとは秘密」
「収録じゃなくて、ステージなんですよね?」
「ステージ、と、生中継に近いかな」 
 一瞬、プロデューサーが目を逸らす。きっと、プロデューサーはかなりの部分を知っているのだ。
 それでも、私に教えようとしないのは、なぜなんだろう?
「いつ?」
「ん?」
「本番はいつなんですか?」
「まぁ待て。律子。こっちの話も聞いてくれ。なんでこんな風に、『秘密』を連呼すると思う?」
 妙に真剣なプロデューサーの顔に、少し冷静さを取り戻す。自分用のコーヒーを一口。
「何か、後ろめたい事があるとか、ツッコまれたくない事があるからじゃないですか?」
 ガクッという効果音が見えそうな昭和のコケかたをするプロデューサーに、少し笑ってしまった。
「だって、水着でライブハウスとか、訳分からない仕事取ってくるじゃないですか。たまに」
 まぁ、そんな事もあったなぁ、と、とぼけるプロデューサーの額にデコピン。
「あうッツ」
「前置きはいいから、言いたい事を言ってください」
 大げさに額をさすりながら、それでもプロデューサーらしい顔を作って、口を開いた。

「今までとは、少し違う種類のイベントになるかもしれないんだ」
「要領を得ませんが」
「端的に言えば、律子が、というかアイドルが主役ではないかもしれない」
「だーかーら、具体的に」
「いや、なんと言えばいいのかなぁ」
 プロデューサーはプロデューサーで必死に何かを伝えようとしているのだが、上手くいかないらしい。
 ……そんなに特殊な仕事なんだろうか。
 それならそれで、面白そうだ。もしファン獲得や知名度UPに繋がらなくても、良い経験と割り切れる。
「じゃ、質問を変えます」
 おそらくプロデューサーはもう少し情報を持っているのだが、言えない理由か約束があるのだろう。
 多少、嗜好性に怪しい点はあるものの、私をここまで引っ張り上げた手腕は、間違いない人だ。
「プロデューサーは、今回の仕事、私で務まると思いますか?」
「もちろん、務まる。向いてると思うぞ」
「プロデューサーは、今回の仕事、私にやらせたいですか?」
「もちろん。これを成功させたら、歌い手としての幅も広がるはずだ!」
 腕を組み、人差し指を頬に当てる。視線を上に向け、一考。ゴクリ、と、緊張した面持ちのプロデューサーが、一度喉を湿らせた。
 ――ちょっと面白そうに思えてきた。

「分かりました。秋月律子、その秘密のお仕事、やってみます」
「そうか! ありがとう、律子! 大丈夫、俺も全面的にサポートするぞ!!」
 私の両手をとり、ブンブンと上下に振るプロデューサーの笑顔が、なんだか泣き顔みたいに見える。
 そんなに喜ばなくてもいいのに。まったく、子供じゃあるまいし。
 ……子供、じゃあるまいし。
「そういえば、プロデューサー。今回の遅刻の理由、聞いてませんよ!」
 あ、と動きを止め、手を離したプロデューサーは、大量の荷物の中から1つの筒を取り出した。
「実は、企画元から連絡があって、この仕事のポスターが刷り上ったっていうから、貰ってきたんだ」
 そういって、嬉しそうな笑顔で筒からポスターを取り出した。
「このポスター、『律子バージョン』なんだぞ! 他も何パターンかあるらしいんだけど――」
「ちょっと、なんで私がOKする前に私のバージョンができてるんで――」

「12月4日ああぁぁ!?」
 ポスターには、間違いなくそう書いてあった。
「あと2週間切ってるじゃないですかぁ!!」
「いやー、律子がやる気になってくれて良かったよ。うん、大丈夫。イケるって!」
「こぉの能天気プロデューサー! そこ正座ぁぁっ!」

 

 

第二話 『子守唄のように』


 765プロを出て、既に20分ほどが経っていた。
 11月25日。水曜日。首都高。
 プロデューサーがハンドルを握るその車中で、律子は新しい情報を聞かされていた。

「なんでそういう事を隠しておくんですか。プロデューサーは……」
 当日の、共演者の名を聞いた。自分が歌う、曲名を聞いた。
 前者はほぼ予想通りであり、後者は全くの予想外だった。
「先に聞いていたら、辞退しかねない、と思ったから伏せていた」
「じゃあ質問を変えます。なんで今、このタイミングで明かすんですか?」
「一度受けた仕事をキャンセルできるほど無責任じゃないと知ってるから、明かした」
 主語は無いが、無論、律子の事だ。
 ――確かに、事前に聞いていたら、断ったかもしれないなぁ。
 少なくとも、『考えさせてください』とは言っただろう、と律子は思った。

 夜。BGMとしての歌。クラブという未知の会場――。

 765プロには多くのアイドルがいる。
 みんな個性的であり、それぞれに魅力と持ち味を持っている。
 今回の企画と他の参加者を照らし合わせた時、それぞれが適任に思えた。
 それは、例えば洗練された歌唱力であり、大人の色香であり、品のある社交性だ。
 じゃあ、自分の持ち味が今回の企画に合うのかといえば、それは疑問だった。
 ましてや、歌う予定の歌が――。
 企画の趣旨を聞いた時、間違いなく千早は出るのだろうと思った。
 が、まさか、自分が千早の前で……

「自分は場違いだ、みたいに思ってるのか?」
「当たらずとも遠からず、ってとこですね。何で私が、という気はします」
「大丈夫」
 視線をまっすぐ前に向けたまま、プロデューサーが呟いた。
「大丈夫、って何がですか? 何の根拠も無しに、そんな事言わないで下さい」
「根拠なら、ある」
「……聞かせて下さい。そこまで言うなら」
 律子の目に映る、妙に自信ありげなプロデューサーの横顔。顎の裏の剃り残し。
 ついそれを引っ張り、注意したくなる気持ちを抑えて、律子は先を促した。
「765プロのアイドル達は、みんな『プロのアイドル』だ。でもな――」
 プロデューサーが、ほんの一瞬だけ律子の目を見て言った。
「律子は、『アイドルのプロ』なんだ」
 視線を戻したプロデューサーの、妙に晴れやかな笑顔に、少しだけ救われた気がした。
「もっともらしい事を言えば深読みしてくれるだろう、なんて甘いですよ。プロデューサー殿」
 ――こうまで自分を信じてくれるプロデューサーの期待には、応えないとダメよね。
 さて、目的地まで、あと10分くらいかな、と、プロデューサーが話題を変えた。
 2人は、会場となる、古いクラブへと向かっていた。

 古くから、外国人も多く住むその街の一画に、舞台となる店があった。
 昭和、もしかしたらもっと古いのではないか、と錯覚するような重厚な店構えは、
それでも存在感を主張しすぎる事無く、街の夜に溶け込んでいた。
「……なんか、緊張しますね」
 ライブハウスやホールとは根本的に違う。場違い、という印象も決して間違いではない。
「今日は休業日らしいから、ご挨拶と会場の下見だ」
 真鍮の重いドアノブを押し、2人は店の中へと入った。

「プロデューサー、こちらの方は――?」
 その老人は、カウンターの一番奥の席に座ったまま、グラスを傾けていた。
 律子は、その老人の皺だらけの手から視線を移し、改めてプロデューサーに問いかける。
「ああ、紹介しよう。こちらは、この店のオーナーさんだ」
「この、お店の……?」
「こちらが今回出演させて頂くメンバーの1人、秋月律子です」
「秋月律子です。よろしくお願いいたします」
「よくお越し下さいました。少し、足が不自由でしてな。このまま失礼しますよ」
 椅子を回転させ、老人はその右手を差し出した。
 律子が内心の躊躇を表に出さずに右手を重ねると、老人は嬉しそうに微笑んだ。
 広い店だった。店の奥にはステージがあり、ボックス席がある。
 それとは別に、カウンターがある。マホガニー。厚い木のカウンターだ。
 ナイトクラブ、と言うのだろうか――律子は古い日本映画のワンシーンを思い出していた。
 この店のステージに、自分が立つという実感が、まだ湧かない。


「この街は、もうすっかり年老いておりましてね……」
 老人は、店内を見渡しながら語った。
 歴史のある街並みが、観光名所にもなっている、そんな街だ。
 お洒落な街、グルメの街、夜景のきれいな街――そんな街だ。
 プロデューサーは、素直な気持ちでそう伝えた。
 だが、それでもなお、老人は哀しそうに首を振りながら言葉を続けた。
「それでも残念ながら、街として成長していた時代とは違います」
 そう言いながらそっとグラスを傾ける老人の手は、深い皺だらけだった。
「そしてこの店も、もう役割を終えようとしています」

 細かくは、聞けなかった。
 ただ、その老人の寂しそうな、それでも充足感に満ちた笑顔が印象的で、
 だからこそ、その言葉の意味は、1つしか思い浮かばなかった。

「今回の企画のプロデューサーは、この店を気に入っていてくれてましてね」
 老人が、呟く様に、経緯を語り始めた。
 この店は、今年の年末でその歴史に幕を下ろす事になった。
 その噂は常連客の間で瞬く間に広がり、そして、その人物の知る所となったらしい。
「『何かできることはないか』と聞かれました」
 その時の事を、老人は確かに思い出していた。
「私は、『たった一夜でいいから、この店に似合う歌が欲しい』とお願いをしました」
「この店に似合う、歌ですか……」
 ――私に、歌えるだろうか?
 ――そもそも、私達で良いのだろうか?
 律子は思い悩む。
 迷いと、不安。戸惑い――それを打ち消して欲しくて、プロデューサーの顔を見る。
「大丈夫だよ。絶対に上手くいくさ」
 プロデューサーは微笑みを返す。
「お嬢さんや」
 老人の声。その目は優しく、そして真剣だった。
「あなたはあなたのプロデューサーを信じればよいのです。そして――」
 カラン。グラスの中で、氷が鳴った。
「私は、この企画のプロデューサーを信じます」


 老人の願いは、一夜の歌。
 去り行く者への『鎮魂歌』ではなく、
 休息の時を迎える者への、『子守唄』だった。


 老人の言葉と想い。
 この歴史を重ねた空間。
 プロデューサーの言葉と表情。

 必要なのは、何か。
 求められているものは、何か。

 あらゆる情報が、律子の中で分析され、組み立てられていく。
 期待に応えたい。願いを叶えたい。
 その為に、今の自分にできる事は――?
 その為に、12月4日までにできる事は――?

 できる。大丈夫。


 ――最高の、一夜を。


「素敵なステージを用意して頂き、ありがとうございます」
 律子は一歩進み出ると、改めて、右手を差し出した。
 老人がそっと差し出した右手を受け止め、さらに左手を重ね、両手で包んだ。
「いや、ステージを用意するのは企画プロデューサーなんだよ」
「そうかもしれません。でも――」
 老人の手はまだ充分に力強く、そして、温かかった。
「貴方が守り抜いたこのお店の空気と、積み重ねた歴史までが、私達のステージですから」


 ――律子は、『アイドルのプロ』なんだ。
 そんな、プロデューサーの言葉が聞こえた気がした。

 

 

第三話 『その歌は、夜を纏いて』


 【12月2日、午後。15時34分】

「黙ってないで、なんとか言ったらどうなの!?」
 伊織は歌い終えた直後にブースを飛び出し、律子の目の前までやってきた。
 しかし律子は座ったまま、目を合わせる事も無くただ腕を組み、床の一点を見つめていた。
「ちょっと、聞いてるワケ!?」
「ええ、聞いてた。とても……良かった」
「なによそれ! バカにしてんじゃ――」
「バカになんてしてないわ。むしろ逆よ」
 律子の目が、伊織の目と合った。
 その瞬間、伊織の不安が全て、律子に伝わった。
 伊織は、不安がっていた。
 伊織は、律子が歌う『いっぱいいっぱい』がどれだけライブで盛り上がる曲かを知っていた。
 伊織は、その律子の「持ち歌」を、本人の前で歌うという事が、不安だった――。
 表面的にはいつもの伊織だったが視線の揺れまでは抑えられず、律子はその内心を察した。
 律子は椅子から立ち上がると、無理矢理握手をするような形で一度伊織の手を取る。
 そして肩を寄せ、
「ありがとう」
 ―― そう、伊織の耳元で告げた。
「『今の曲』は間違いなく、伊織の歌だったわ。おかげで、企画者の意図が掴めた気がする」
「え――っ!?」
 伊織が慌てて振り返ると、背を向けたまま、伊織に向かって手を振る律子の姿が見えた。
 たった今、伊織が出てきた扉に入る。
 隣のスタジオで律子を待つのは、5人の、ベテラン演奏者達だった。


    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 【12月2日、昼。12時16分】

「こんな所にスタジオなんてありましたっけ?」
「ああ。あるらしい」
「らしい、ってプロデューサー! どういう事ですか?」

 プロデューサーの運転で訪れたその場所は、若者の街として有名な街の片隅だった。
「12月2日、ぜひ私のスタジオに来て欲しいのですが――」
 という“企画プロデューサー”からの連絡を小鳥さんが受けたのが昨日の夜。
 慌ててスケジュール調整を行い、なんとか訪れる事ができたのが、律子と伊織の2人だった。
 他のメンバーは少し遅れて、あるいは明日、訪問する予定になっていた。


 【12月2日、昼。12時22分】

 スタジオの入り口は、狭い下りの階段だった。
 よほど古い時代の建物なのか、傾斜がきつく、ヒールの高い靴を履いていた伊織は、
「何勝手に進んでんのよ!」
 と文句を言いながら、プロデューサーの腕にしがみつく様にして降りていた。
 木製の、重厚な作りの扉を開ける。
 そこはかつてはレストランかバーであったと思われる構造だった。
 入り口にはカウンターとスツールが5つ。漆喰の白と古い煉瓦の茶色で彩られた壁面。
 しかし、店の奥に目を向けると、途端にガラスと金属で囲まれた空間になっていた。
「ようこそお越しくださいました」
 と、店内に声が響く。マイクを通した声が、スピーカーから聞こえてくる。
「時間が惜しいので、どうぞ奥へ。まずは当日歌って頂く曲の、生演奏をお聞き頂きます」
 奥を見ると、5人の男が、その視線をこちらに向けていた。

 全員がそれぞれに楽器を手にしているが、その周辺にも口元にもマイクは見当たらない。
 ――声の主は、あの5人の中ではなく、別にいる訳か……
 プロデューサーは、今回の“企画プロデューサー”はプレイヤーとしても参加するものだと考えていた。
 今回のイベント用にアレンジされた曲はすでに受け取っていて、それを直接手がけた人物だ、とも聞いている。
 音作りに対しては経験豊かで、また、丁寧だ――と、プロデューサーは感じていた。
 おそらく奏者としても一定の腕前をもっているのだろう、と想像していたのだが、どうも完全に裏方に回るらしい。
 今回の企画は、面白い。
 ファン獲得を最優先に考えてしまいがちな自分のスタンスでは、絶対に生まれないイベントだ。
 ――このイベントは、5万人が熱狂するような一夜の夢じゃなくて、
 プロデューサーは、5人の男と、2人の少女を見比べて想う。
 ―― 何十人かの胸に、一生消えない火を灯すような、そんな夜なんだろうな……


    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 【12月2日、午後。15時39分】


 ――ストリングス、ドラム、ベース。ブラスと、パーカッション。
 律子の目は、演奏ブース内の楽器を辿っていた。
 中には見たこともなかった鍵盤楽器もあるが、基本的にはジャズの構成だ。

 アレンジを初めて聞いた時、律子にはどうしても違和感があった。
 「音が足りない」という印象だ。
 楽器の数や選択を考えても、音の重なりに厚みが無いように思えた。
 そして、なぜ「自分の曲」を伊織が歌うんだろう、という疑問があった。
 裏を返せば、なぜ自分が、「千早の曲」を歌うんだろう、という不安も。

 その理由は、伊織の歌を聞いて、全て理解できた。
 この構成は、全てが精緻なパズルだ。

 音が足りない、という印象の答は、簡単だった。事実、足りなかった。
 「水瀬伊織の声」という音だ。
 伊織の声が加わる事で、この『いっぱいいっぱい』は完成する。
 逆に、伊織の声と混ざり、重なるような音は全て排除されていたのだ。
 たった一つの、音の指定席。
 残念だけど、伊織と全く声質の違う私では、そこには合わない。
 これは間違いなく、水瀬伊織の為に作られた『いっぱいいっぱい』だった。
 寂しい気持ちが無いといえば、嘘になる。
 でも、それを差し引いても、喜びの方が大きかった。
 この曲には、こんな表情もあったのか。
 伊織には、こんな曲調も似合ったのか。

 だとすれば――

 律子は確信していた。

 ――次の曲は、私の為のアレンジだ。

 思いを馳せる。
 あの店に、何人のお客さんが来てくれるだろうか。
 音声だけが中継されるらしいネットの先で、何人のファンが聴いてくれるだろうか。

 曲のスタート。
 目をつぶると、力強く歌う千早の姿が、静かに、夜のイメージに溶けていく。
 暗い夜の中、自分の声を通す為の音の道が、そこに見えた。


 【12月2日、午後。15時58分】

 打ち合わせを挟んで2度歌い終え、ブースを出た律子を、3人が拍手で迎えた。
 プロデューサーと、水瀬伊織と、そして如月千早の3人が、そこにいた。

 

 

                                                              【GO to “the Night”】

 

第一話『霧の中、夢の中』:2009/11/21(17:20)公開

第二話『子守唄のように』:2009/11/25(18:45)前編公開、(19:37)後編公開

第三話 『その歌は、夜を纏いて』:200/12/02(15:58)公開

 

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